Book Review 「おやすみなさいの枕元」Vol.6

By 岩村彩 - 8月 26, 2019




ベットに入って眠る前のひととき、こんな本はいかがでしょう…。

『ある晴れた夏の空』(偕成社)


<安らかに眠って下さい 過ちは 繰り返しませぬから>(原爆死没者のための慰霊碑)
「——あやまちはくりかえしませんから、と言っているのはね、日本人が犯したあやまちというような、せまい意味で言っているのではないの。(中略)われわれ人類は、あやまちをくりかえしませんって、そう言っているの。(中略)私=日本人であり、あなた=アメリカ人であり、世界=人類でもある、ということ。」

(『ある晴れた夏の朝』より)


この夏の読書感想文コンクール・中学生の部の課題図書です。帯に書かれている「原爆の是非を論じるアメリカ高校生の8人」という紹介を見て、思わず手に取りました。

アメリカには「原爆は必要悪だった」と考えている人も少なくない、と聞いたことはありましたが、十代の高校生はどう感じているのだろう。アメリカ在住の作家・小手毬るいさんは、日本の中学生に何を伝えたくて、「原爆の是非」をテーマにした小説を書いたのだろう。そして、8人の高校生のディベートの結末は?


そんな疑問をいっぱい抱えて読み始めたこの小説。読み進めていくうちに、その疑問はするするとほどけていきました。そうか、作者は、戦争と原爆投下の背景に何があったのかを多角的にとらえ、それを十代の子どもたちに分かりやすく伝えるために「高校生のディベート」という場を借りたんだ。根底に流れるのは、平和への強い希求。悲惨な歴史的事実をどう捉えるのか。みずみずしい感性あふれる十代の子どもたちが、悩み考えながら議論をする姿は感動です。(ライター 岩村)


「同じひとつのあおぞらのもとで、私たちはつぶやく、
何度も。
何度でも。
あやまちは二度とくりかえしません、と。」(『ある晴れた夏の朝』より)

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